2021/10/01

いとなみ

 


霧島アートの森と2年計画で進めている"手編みの物語をあつめるプロジェクト"の展示「いとなみ」が今日から始まった。

もともとは、今年度霧島アートの森の「アートラボ」枠で個展を開催する予定だったのだけれど、建物の改修工事が入った為一年延期になり、来年展示する作品の強度をより増す為、このプロジェクトを立ち上げた。

今年度は霧島アートの森が位置する湧水町の人々から手編みのあみものと、それにまつわるエピソードを集め、それにフォーカスした展示、展示したあみもののうち提供してくれたものを糸にほどくワークショップを行い、来年度の個展で私が大きな作品としてそのほどいた糸を使って作品を編み、展示するという計画。

霧島アートの森から展示のお話をいただいた時には既に新型コロナウィルスの感染が始まっていて、プロジェクトの組み立て時にも、コロナは不可避な問題として既にあった。

以前は、特定の土地に2週間~1か月程滞在して、自分という身体を通して土地や人と関わり、作品を作ってきたけれど、子どもを産んでまだ幼いというのと、さらにコロナ禍でますます以前のような作り方ができなくなった。

そうした前提があり、2017年に福岡の三菱地所アルティアムでもやった、人々から手編みのあみものを募り、それを糸にほどいて自分の作品の素材にするということをやることにした。2017年のアルティアムの展示時も、妊娠後期~出産直後だったこともあり、これまでのように自由に自分が動くことが難しい状況にあったので、作品に誰かの手編みのあみもののストーリーという強力な素材を取り入れ、作品をつくった。「手編みのあみもの」という媒体を通して、結果その編み手の気持ちに共感するという体験を得た。

そして2021年の今回はこのコロナ禍において、不要不急の往来の自粛や非接触ということが求められる中、やはり「手編みのあみもの」というモノを媒介としてその向こうにいる人々と関わろうとしている。

当初は9/24から始まる予定でチラシやのぼりも作り、告知も始めていたけれど、直前にいわゆる「まん防」の延長が決まって展示の開始も自動的に延期になった。

展示がいつ始められるかわからない、あるいは会期半ばにして突然終わるということが普通に起こる状況は、今まで体験したことのないことで、一時はなんだかすごい喪失感と無力感を感じた。オープン日の今日は会場に行けないのだけれど、実際展示が始まって作品を観客に見てもらっている光景をこの目で確かめたい。