2016/06/20

久留米絣との出会い

筑後の下見を行ってきました

筑後は、とてもものづくりの厚みのあるところで、それも長い時間と膨大な手数をかけて作り出されるものがたくさんあった
その中から、樟脳、半纏、久留米絣の工房などを見学させてもらった

そして私はやはり、久留米絣の制作過程と、その糸にいたく揺さぶられた

初日に訪れた、田中絣工房さん↓

久留米絣は、約220年前、井上伝さんという当時12才の女の子が発見した技法と言われている。
今では久留米ではもう織られておらず、この筑後市か、お隣の広川町に残るのみになっているそうだ。

工房の玄関先につるされていた、絣の緯糸。この糸に衝撃を受ける。

そしてこちらが縦糸。それぞれ、もう一方の糸と出会ったのちに絣の白い模様になる部分が、白く染め残されている。
白い部分が、いわば絣模様の設計図になっている。

そしてこちら!藍染めをされる前の、糸。

藍色に染めずに白く残す部分が、糸でくくられているのです。
おおお・・・
これだけでもう、作品なのではないですか。


すごい存在感
おびただしい数の、くくりが施されている。
気のとおおおくなるような手と時間がここに宿っている



ホテルに戻って明け方ふと、
これらの糸は、えがきだされる模様が既にその身体に内包された、いわば
未来の記憶を宿した糸なのだと思った。




下見最終日、同じ筑後市の、「池田絣工房」さんに伺い、見学をさせていただいた。
たくさん並んだ藍甕の光景

朝方から藍染をする男性たち

染めた布を、なんども地面に叩きつけて、色を染み込ませる
力仕事

藍 とてもきれい
甕によって、色の感じが違う どの甕も美しい

外では、こちらのご主人が、くくり糸をほどく作業をされていた。

干された反物

糸を段階で染め分けるため、最初にほどかれた糸の部分は薄い青色になる
とてもきれい
そしてとても手間のかかる仕事

藍甕 冬場は、甕を二重にして蓼からとったロウを入れて温度を保つのだそうだ

くくり糸をほどいて巻き取る作業をされるご主人

巻き取られたくくり糸 
これも、とても気になる。
白い色を染め残すためだけにくくられ、織られる前にほどかれる糸

織りの工房



待機する縦糸

図柄の下絵

かつては、濡れるとやわらかくなる「アラソウ」で糸がくくられていたのだそうだ

さまざまな柄の記憶を宿した、緯糸のケース

椿模様を含んだ糸

池田絣工房さんのお隣に、糸くくり専門の工房があり、そちらも見せていただいた。
機械を操り、糸をくくっていく精密な作業。





そして午後からは明治館の奥さんと一緒に、お隣八女市の「下川織物」さんを見学させていただいた。↓
工房入り口に干された糸。
こちらでは藍だけでなく、さまざまな色で染め分けられている。

60年ものの、自動織り機がずらりと並ぶ工房。

縦糸に、緯糸が入ると、絵柄が浮かび上がってくる。
仕組みが頭ではわかっていても、やはり不思議。

その絵柄が凝縮された緯糸

糸を房にするための機械

インスタレーションのよう
・・・

記念に、とここのご主人が写真を撮ってくださった。
明治館の奥さんと一緒に



かつて、久留米だけでなくて日本中どこでも、農閑期に麻や綿や絹で糸をつくり、人々は染めたり、織ったり、することに従事していた時代があった
その頃と同じように、糸へかける時間がここ筑後にはまだ残っている