2013/07/21

「編む」にむけて

山口へ向かっています

今回の制作・展示は、ダンサーであるイフクキョウコさんが声をかけてくださったことから実現しました
イフクさんと知り合ったのは多分5、6年前になるのかな、コンテンポラリーダンスのイベントが別府であって、それを見に行ったのが最初だったと思います。その頃別府や大分ではコンテンポラリーダンスのイベントをよくやっていたしよく見に行っていたように思います。その後私の展示をイフクさんが見てくださったり、また私がイフクさんのダンスを見に行ったり、ていうのが何回かあって、中でも印象的だったのが、大分のマルティカルティという今はもうなくなったスペースでイフクさんが踊っているのを見たときだった。狭いスペースの壁の前に観客は立っていてその中でイフクさんが一人で踊るんだけれど、だんだん一つだけ灯っていた照明が少しずつ消えていって、踊るイフクさんの姿は見えなくなっていき、ついには暗闇になった。それでもすぐそこで踊っているイフクさんの息づかいと、踊ることで起こる空気の揺れがリアルに伝わってきて、ダンスとは目でみるものじゃなくて、ダンサーの身体から発せられるエネルギーの波を、自分との間にある空気の揺れを介在しながら、自分の身体でもって感じることなんだなぁと思った。それはとても印象深い体験だった。

2011年の6月に福岡のWALD ART STUDIOでやはり糸を編む滞在制作をしていた時、当時福岡に住んでいたイフクさんが見に来てくれた。糸を何週間かかけて公開制作で編んでいくタイプの作品は、会期の終了と共に姿を消す運命にあるわけだけれど、その最後に、音楽やダンスを作品の糸の中でやってもらうことが時々あって、そうすると作品に違う動きが生まれて、作品が存在していたことが実感できる、あぁよかったな、と思ったりするのだった。私はイフクさんに作品の中で踊ってほしいと思ったんだけど、その時は実現には至らなかった。

かねがねダンスや音楽と絡んで何かできたらいいなぁと思っていたので、イフクさんから連絡をいただいた時はとても嬉しかった。さらには山口の身体表現のスタジオの運営メンバーになっていて、そこで編んでほしいというお話だった。
ここ最近、作品を作る際の身体の重要性をすごく感じていて、頭で考えるのではなくて身体に頼って作ること、身体の一部である手を使って編むことで、大きな何かと繋がること、身体を使ってもらうこと、それだからこそ自分の身体を大事にしたい、と考えるようになった。
だから身体表現のスペースで、この表現方法と作品が、どう捉えられるのか、どう見えるのか、とても楽しみだと思った。

3月の終わりに会場の下見にスタジオイマイチを訪れて、久々にイフクさんにお会いした。その時の会話の中でイフクさんが
「地面の下のエネルギーを足の裏から感じながら踊る」
というようなことを言った。
それは編むのも同じで、その場にあるエネルギーのようなものを目に見えるかたちにするわけだけれど、今回ここでは、このスタジオイマイチの、地面の下のエネルギーを、編んでいこう、と思った。
だからタイトルは「地面を編む」
こうとしか言いようがなかったんだな。

そしてその作品の中で、ダンサーと音楽と詩の朗読をしてもらえることになった。色んな表現がクロスするこのイベントは「場を編む」になった。

そして総合タイトルは「編む」。
シンプルだけどこれ以上でも以下でもない、身体を使った行為を表す動詞。

だから今回は身体を使って編む、これをやります。どうぞよろしくお願いします。